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損と嘘

観劇雑記/主にミュージカルのこととか書きます

人間は生まれつき違いがあるのだ

行き場のない感情
人間は生まれつき違いがあるのだ
どんなに足掻いても埋めることのできない



高校の時、2007年宝塚版エリザベート雪組)のDVDを友人に借りた。これがすべての元凶であった。私はみるみるうちに宝塚にハマり、高校という貴重な青春時代を宝塚に捧げてしまった挙句フィールドを外部へ移しながら未だに舞台沼から抜け出せずにいる(別に抜け出す必要もないのだが)。

初めて宝塚を(映像だが)見た時一番衝撃を受けたのは、盛り盛りの化粧でも突然始まる歌でもトートとルドルフのキスシーンでもなく、特典として付いていた稽古場風景の映像であった。
兎に角、全員細い…。脚が長い、顔が小さい。特に印象深かったのは、フィナーレの男役燕尾による群舞「闇が広がる」で、もう全員折れ曲りそうなくらい華奢な体型の男役がビシビシ踊りまくっているのである。先頭の水さんは鉛筆みたいに体が細いのに一番キレのあるダンスをしていたと思う。
現世で人間として活動するタカラジェンヌの姿を見てその尋常でないスタイルの良さに慄いたことは勿論だが、こんなにか細い体をした女性たちからなんだか物凄いエネルギーが発せられていることがありありと感じられたのが、一番衝撃的だったように覚えている。

私はその姿に強く憧れてしまった。
もうほんとに書くのも恥ずかしいくらいなのですが、あの頃はタカラジェンヌになれないなら生きている意味なんてない、くらいに思い詰めていた。宝塚に入るには年齢制限があるから、丁度受験資格のある年齢=タカラジェンヌになるチャンスをやすやすと自分が通り過ぎていってしまう感覚にもどかしさを感じ、度々極端な思考に陥って絶望した。

極端な思考とは一体何なのかというと、「あ、私は一生美しい生き方はできないのだろうな」という感じの考え方だ。エリザベートの稽古場風景を見た時、タカラジェンヌ1人1人がその瞬間に対して非常に真剣に、全力で生きているように見えたのだが、私はこういう、芸事に対して命を燃やすような経験は後にも先にも無いのだろうなと思った。だってこの人たちは生業としてやっているのである。私が例えば近所のカルチャースクールで踊りや歌を習ったとして、彼女たちの生き方に近づけるかというとそれは無理な話しで、私の拘る点は単に芸事をしているかどうかの違いではなかった。
かつて美空ひばりは「自分は唄を歌うために生まれてきたのだ」というようなことを言ったらしいが、こういう台詞はいつも私を苦しめる。
自分の好きなことをすることが自分の使命で、それが生業になる…こういうのに当時はすごく憧れていたし、今も憧れがある。自分が生きているって実感できるようなこと、自分を誇れるようなこと、何かそういうことをずっとやりながら生きていけたらなーと最近ですら度々思う。書きながらものすごい甘ったれな考えだなとは思っているが本当にそうなので仕方ない。

がしかし、自分を鑑みたところでどうか。
顔も体も全然美しくないどころか容姿なんてせいぜいタカラジェンヌの靴の裏にくっついたガム程度のレベルにしか満たない。とりたてて頭が良いわけでも何かのスキルがあるわけでもない。人を楽しませる才能もない。まあ挙げればキリがないが、詰まる所自分は死ぬほど平凡な人間なのであった。
しかし平凡な奴ほど夢を見るというか自分は特別だと思っていたいものだから、夢と現実の折り合いがなかなかつかない。このまま何の張り合いもない仕事を毎日毎日続けながらたまに来る土日に舞台を観に行って、また働いて、それで何が実るというのか?もう、考えただけで自殺願望が芽生えるというものだ(眼球は非常に突飛な思考回路をもっています)。

で、そんな時に思い出すんですよ。

人間は生まれつき違いがあるのだ…

そりゃそうですよ。どんなに足掻いても埋めることのできない違いが、人間にはある!努力したってトマトはメロンになれない。だからもう諦めようじゃないかという気持ちになれる。ナンバーワンになれなくてもいい元々特別なオンリーワンと今色々大変なSMAPも言っていた(私はこの歌大嫌いだが)。王族は王族、百姓は百姓なのだ。ロナンが頑張って革命を起こして平民に権利が与えられたとしても、やはり血筋だけが持つ高貴な香りは手に入り得ないのだと思う。

長々書いてしまったが要するに、大人になれよってことです。理想と現実の折り合いくらい自分でどうにかつけろよと、アルトワ様は仰ってるわけです(←めちゃくちゃ捻じ曲げた解釈)。自分のできる範囲内でやれることを精一杯やるのが一番自分のためになるはずだし、リサもそんな感じのことを歌っていた。

これから身の丈に合わない夢を見てしまいそうになった日には逐一このフレーズを思い出して、適度に現実と向き合おうと思います。

もう大人だからね。


だからアルトワさま!


究極の快楽をください!!!
ヴィーナスにして!!!!!!